日本歌謡のオノマトペー

(「昭和歌謡の風景」予告編)

青森

津軽山唄

イヤイデヤ

 関西の人がよく、「言わいでか」といいますが、それとは関係ないでしょう。「いざ、出(いで)や」でしょうか?
 歌詞を見ると、
「十五になると、木を伐りに山に登らされる。腹も空けば、日も暮れる。これ見せたい、わが親に」
というのだから、売られたのかもしれない。とすれば、「いやだ」を強めた言葉にも聞こえる。
 しかしこれ、仕事唄ではなく、実は山の神をまつる祝い唄だそう。

イヤイデヤ 十五や 十五七は ヤエ
十五になるから 山、山登りゃ

と、十五なのか、十五、六ではなく十五、七なのか、七五三みたいなものか、それとも十五七という人が十五になるのか、よく意味がつかめないのも、
「五百羅漢の 五葉の松 三度拝めば 若くなる 俺も拝みたい 六葉の松」
と、五葉なのか六葉なのかというのも、ま、神様のことだからとしておきましょうか。
 五葉の松とは針葉の数が五本の松のことで、めでたいのか、各地の神社仏閣や庭園などに植えられています。一方、六葉の松は存在しないようです。もしかしたら誤植かも?
 とにかく、数字がややこしい歌です。

嘉瀬の奴踊り

ソラヨヤナカサッサ

 津軽の金木町嘉瀬に伝わる盆踊り唄。起源は南北朝時代というから、たいそう古い話。嘉瀬に逃れた南朝側の鳴海伝之丞を慰めようと、下僕の徳助が唄い、踊ったのが始まりという。
 囃し言葉は、「そりゃよいじゃないか、さあさあ」でしょうか。
 歌詞を見ると、

サーサこれから奴踊り踊る 手拍子揃えて しなよく踊れ
嘉瀬はよいとこ お米の出どこ 黄金波打つ 実りの秋よ

と、うまく合う気がします。しかし、
「鮎は瀬につく 烏ァ木に止まる わたしゃあなたの ソリャ目にとまる」
なんてうぬぼれられると、「あ、そう。そりゃよかったね」と、義理の相づちになりそうです。

黒石よされ節

ハーイッチャホイホイ
 よされ節は各地にあり、天保年間の文献にも記載されているそうですが、黒石のよされ節が最も古い形を残しているという。
 民謡の囃し言葉には、「ハー」もあれば、「ハイ」もあります。「ッチャ」を「ったら(といったら)」と取ると、その前は「ハイ」を長くのばしたものとなって、「はいったら、ほいほい」の意となる。ま、意という程の意味もないですが。

温湯板留 かつぶしゃいらぬ 中野お不動さま だしになる

 温湯(ぬるゆ)も板留も黒石近くの温泉です。温湯はかつて「寒湯」という時が当てられていたそうで、これじゃちっとも温泉らしくない。実際にはかなり高音の温泉らしいですが。
 近くの中野神社に問題の不動尊が祀られており、かなり罰当たりな歌詞です。
「黒石甚句」では後半が違い、「中野もみじをだしにとる」となります。中野は紅葉の名所としても有名。しかし、もみじが浮いているのならまだしも、だしをとった温泉には入りたくないです。

津軽あいや節

アイヤアーナー アイヤ

 熊本で歌われていた「ハイヤ節」が、北前船によって伝えられたものだそうで、「アイヤ」は「ハイヤ」が訛ったもの。

リンゴ花咲きゃ 野山がかすむ
唄うあの娘の それもよいや 声のよさ
岩木ほほえむ リンゴの園に
かすり姉コの それもよいや 袋かけ

津軽小原節

ハアー サアーサー ダシタガ ヨイヤ アー

 この歌も「ハイヤ節」が「塩釜甚句」になり、そこから生まれたもの。「ダシタガ」は、「どうしたか」でしょうか。

りんご作りの 娘なら りんご作りの婿取って
りんご畑で共稼ぎ これが津軽の お国柄

「あいや節」同様、何とも平和なりんご農家ですが、主役はあくまで娘で、しかも嫁にやらないで婿取りです。

津軽タント節

タントタント

 元は秋田の歌なので、囃し言葉についてはそちらに譲ることにして、歌詞が面白いので、ちょっと紹介しましょう。

ハア− 電信柱に ツバメが止まる 別れ話の電話聞く 電話聞く
コラ 諦めましょうと 男が言う 諦められぬと 女が言う−
聞いてたツバメが タントタント ひとりで泣いてた そのわけだんよ
ハア− うらみつらみは 会わない先に 会えば涙が 先にたつ
コラ あの時ああして こうなって 今更いやとは聞く耳ね
思い返せと タントタント お月さんも見ている そのわけだんよ

 いやあ、ツバメもお月さんもつき合いがいいです。

津軽甚句(どだればち)

どだば どだればぢぁ だればぢぁまごだ

 実はこれ、歌い出しの部分で、歌詞の一部。本当に意味があるのかと思えますが、「どだば」は「どうだ」、「どだればち」は「どこの誰」で、「だればぢぁまごだ」は「誰の孫だ」という意味。その返事が、

どだば太郎兵衛殿ア よぐ似たもんだな

 太郎兵衛は嫌われ者の庄屋で、孫までよく似て可愛げがない、と歌うことで、日頃の鬱憤を晴らしたものらしい。

唄はよいもの 仕事は出来る
話ァ悪いもの この手こァ止まる

 このあたり、仕事唄のなんたるかを見事に言っている。
 ちなみに囃し詞は「ホーイホイ」でよくありそうですが、「津軽甚句」ではそれが完全な裏声で囃され、非常に珍しい。

津軽じょんがら節

 超有名曲です。この歌、囃し言葉は「ハアー」なので、ここで取り上げるべきではないかもしれませんが、曲名の「じょんがら」についてちょっと。
 何となく津軽三味線の音色を表しているのだろうと思っていましたが、立派な由来がありました。長くなるので端折りますが、慶長年間の戦の際、勝った大浦氏が負けた千徳家の墓を暴こうとし、それに抗議した菩提寺の僧、常椽(じょうえん)は浅瀬石川に身を投じた。その河原を常椽河原と呼び、それが上河原となって「じょんがら」となった。「じょんがら節」は元来千徳氏の居城、浅瀬石城落城を語ったもので、お国自慢の歌詞は後のもの。
 非常に気合いの入ったページがあるので、詳しくはそちらでどうぞ。

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