日本歌謡のオノマトペー

(「昭和歌謡の風景」予告編)

秋田

秋田音頭

ヤートセ ヨーイヤナ キタカサッサ
ドコドッコイドッコイ ドッコイナ

 ここで特徴的なのが「キタカッサッサ」ですが、歌詞の冒頭に、「ちょいと御免を蒙りまして」と、口上のような言葉があることから、「来たか、さあ、さあ」が元のような気がします。
 元々は「御国音頭」という節なしの地口が流行し、やがて囃し言葉だけが発達、文句の方は忘れられた。「御国音頭」自体がかなり即興的な物だったと想像できますが、それを「秋田音頭」は受け継ぎ、裏表合わせると180番まであるとも言われます。さらに様々にアレンジしたり、新しく作ったりも可能で、日本のラップといわれる所以です。
 ちなみに「裏秋田音頭」の歌詞がなかなか傑作で、方言はわからなくても、充分察しがつきます。(18禁!)

 さて、表の歌詞を紹介すると、
「ちょいと御免蒙りまして 秋田音頭の無駄をいう」と、当のこの曲のことから歌い始まり、
「あたりさわりは あるけれど サッサと出しかける」
 この「出しかける」は「無駄をいう」ということでしょうか。ところが、いっこうに無駄をいわない。「裏秋田音頭」を見た後では、あたりさわりのあるものを出すとは、あれのことだと思えてしまう。
「秋田名物 八森(はつもり)はたはた 男鹿では男鹿鰤子 能代春慶 檜山納豆 大館曲(まげ)わっぱ
 秋田よいとこ 名物たくさん 東北一番だ 金山木山に 花咲く公園 美人は舞い踊る」
という際限のないお国自慢。果てには、
「汽車も早いし 電車も早い 電話はなお早い」とは当たり前。
「何でもかんでも早いはよいたら 足袋ははいてもはだしだ」これはあんまり。
「秋田名物 コの字づくしを 摘んで云うならば 坊コに香物(がつ)コ笠椀(かさつ)コに小皿コ 酢ッコに醤油コだ」と、まさにコづくしの方言教室。
「橋の下に 河童コが 河童コ産た その子も河童コで 親河童コ 子河童コ」と、今度は方言早口言葉。
「秋田の国では 雨が降っても からかさなどいらぬ 手ごろの蕗の葉をそろりとさしかけ さっさと出て行くわえ」何を自慢してんだか、よくわからない。
 ちなみに、「汽車も早いし 電車も早い」の続きは、最近では「ジェットはなお速い」と進化しているようです。

どんぱん節

ドンドンパンパン ドンパンパン
ドンドンパンパン ドンパンパン
ドドパパドドパパ ドンパンパン

 このお囃子は太鼓の音からきているようです。確かに威勢がいい。
 歌詞を見ていくと、
「自慢こ言うなら負けないぞ 米コ本場で酒本場 秋田の蕗なら日本一 小野小町の出たところ」
と、相当にお国自慢が好きな県民性らしい。そして、
「唄こきくなら黙ってきけ 上手もあれば下手もある みんなもここさきて唄ってみれ なかなか思うよにいかねもんだ」
と、前曲でもそうだが、唄が歌われる今現在が唄に織り込まれているという、自意識過剰というか、言い訳がましいというか・・・。ま、民謡だけで判断してはいけないでしょうが、知り合いにぴったしの秋田人がいたもので・・・。

おこさ節

オコサデ オコサデ ホントダネ

 「おこさ」とは、「奮い立たせる」という意味の言葉「作興」を逆さにしたのだとか。関東大震災の後には、「国民精神作興に関する勅旨」が出されたり、戦時中には「人民作興」といった具合に使われたりしました。
 しかし、歌詞を見ると、

泣くな鶏 まだ夜は明けぬネ
アラ オコサノサ 明けりゃお寺の
コリャヤノヤッコリャ 鐘が鳴るネ
オコサデ オコサデ ホントダネ

というように、「起こさないで」という掛詞になっているようです。男は朝になれば帰ってしまう。だから朝よ、来ないで欲しい。といった感じでしょうか。
 続く歌詞からは、「起こさないで」という意味はなくなりますが、
「お前来るかと 一升買って待ってたネ あまり遅いので 飲んでしまったネ」という繰り言や、
「恋の古疵 お医者はないか なぜか今夜は いたみ出す
 着いたばかりで すぐ出る舟に おうても話も あとやさき
 舟で来る人 しんから可愛い いのち帆にかけ 浪の花」
など、『梁塵秘抄』と演歌の中間的な詞が多い。

たんと節

タントタント

「藁打ちたんと節」とも呼ばれるので、まさに「藁を打つ音」を表しているように思えます。歌詞にも「上作」という言葉があり、これは「うまくできた」という意味で、特に農業では「豊作」の意になる。これは収穫の仕事唄に違いないと思うのが普通ですが、しかし実際には、北仙地方の郷土芸能「番楽」の踊りの、藁を打つ振りで踊る部分からできたそうです。
 ちなみにこの唄の中にも、今現在歌われているこの唄を歌い込んだ部分があります。

今の流行のタント節
ありたけはり上げてタントタント
アノコノ上作 そのわけだんよ

 最後は決まって「アノコノ上作 そのわけだんよ」で終わるのですが、よく意味はよくわかりません。「アノコノ」というのは「あの子の」ではなく、「あれやこれや」という意味でしょうか?

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