アーバンな空き地


北側から

西側から

南側から

東側から

 ここは新宿です。といってもちょっとはずれ、明治通りと職安通りが交差する当たり。住所でいえば、新宿6丁目。はずれとはいえ、明治通りを渡れば歌舞伎町だし、コマ劇場も伊勢丹も、10分とかからない。そんなところにこんなだだっ広い空き地と、大きな空がある。
 ざっと見まわして、どれぐらいの広さか皆目見当もつかないが、その広さは写真でもおわかりでしょう。一般宅が更地にされると、こんなに狭かったの? って思うほどだが、この空き地、どう見ても広い。
 北側と西側からの写真は午前中、南側と東側からの写真は夕方撮影されているからといって、一日がかりで一周したわけではありません。そこまでは広くない。自宅から新宿駅までの行き帰りです。西側から撮った写真の、中央左側の平べったい建物は、新宿文化センター、南側からの写真の、左フレームぎりぎりに写っている建物の影は、金光教新宿教会
 この空き地には日本テレビのゴルフ練習場と住宅展示場が建っていたが、今年になって取り壊しになった。どちらの施設も広い敷地を必要とするので、壊してみたらやっぱり広いのは当たり前だが、建築計画の掲示がいまだにない。解体作業の現場詰め所があり、そこの郵便受けには、

日本テレビ新宿施設解体作業所
大成・長谷工共同企業体

となっている。作る時もこの2社がからむのは予想され、まあ、どでかいものができるのでしょう。
 この広さならちょっとしたテーマパークができそうだし、超高層ビルもできそうだと、などと話していたが、ふと気づいたのは、まてよ、ここは日テレの持ち物だろ? だったら新社屋を造って移転して来るんじゃないか? フジテレビはお台場に移転して新名所になったし、日テレも同じパターンで大江戸線東新宿駅を大混雑させる気じゃないだろうか?
 そこで日テレのホームページにアクセスしてみると、跡地の使い道はわからなかったものの(株主向けの事業計画などを見ればわかったのかもしれないが、PDFでやたら重かったので)、次の事実が判明した。
 汐留に新社屋建設中!
 ま、私が知らなかっただけかもしれないが、汐留の操車場跡地には思い出がある。1991年に、アーバン・サックスの日本公演が行われたのが汐留だった。

 Urban Saxとはその名の通り、サックス奏者が演奏しながら街を練り歩き、都市を異化するというコンセプトの元に結成された集団。ヴェニスでの公演は有名で、演奏者がゴンドラに分乗し、水路でサックスを吹き流した。
 都市を舞台とする以上、その都市の中核となる場所が演奏会場とならなければいけない。日本公演は決まったが、会場はまだ未定という情報が入った時、私は皇居しかない、皇居の周りを練り歩いて欲しいと思った。宇宙服のようなコスチュームに身を包んだ(演奏者は顔さえ見えず、アノニムな存在と化す)連中が、際限なく繰り返されるフレーズを奏でながら皇居の周りを回り、いくつかに別れたグループがすれ違うたびにフレーズが混交し、うねりを作りだす。そして最後には二重橋の前に集結し、フィナーレを迎える。そんな想像をするだけで、胸がわくわくした。
 彼らが実際に考えていたのは、デパート内での演奏だったそうで、それもまた面白そうではあった。宇宙服もどきのサックス吹きが、次々とエスカレーターで昇ってくる。下りてくるのもそんな連中で、ぶつかり合った音がフロアーへと流れていく。洋服を手に取ったおばさんの後ろを、異様な集団が通り過ぎていく。フィッティング・ルームから出ると、数人のサックス吹きに囲まれている・・・
 しかし実際には、お役所の様々な規制により実現できず、代替案が汐留操車場跡地だった。しかも、当時汐留は広大な空き地だったにもかかわらず、会場は隣接するパナソニックの駐車場。簡単なステージの後ろにはだだっ広い空間が広がっているのに、そちらにはみ出ることは禁じられていた。もっとも、周りのビルの屋上に数人の演奏者が配置され、え、あんなとこに、というような(仮面ライダーのような)演出や、背後に置かれたクレーンから、奏者が演奏しながら吊り下ろされたりというような、それなりに面白いところはあった。
 しかし、いかんせん汐留。そこが東京の中心であるはずもなく、東京を象徴する場所でもなく、背後に巨大な虚空をひかえながら、そちらにはみ出すこともできず、少しもアーバン・サックス的でなかったことも事実だった。(俺もアーヴァン・サックス来日公演の一員としてオープニングイヴェントに出たけど、バッカだなあと思いながらやっていた・・・って、アーバンサックスが。じゃないよ!!アーバンサックスは全く違った意味のすんげえバカで、素晴らし過ぎる−−大友良英) アーバン・サックスを呼んで、「東京バーン」だなんて、タイトルで気づくべきだった。

 その汐留に日テレが移転予定で、今新宿にはぽっぽかり大きな穴が空いている。実は日テレは新社屋建設のために、ゴルフ練習場を都市基盤整備公団に売り払ったそうで、ここには高層マンションができるらしい。歌舞伎町に近いということで、ゴルフ練習場にはその筋の常連も多く、閉鎖には根回しが大変だったという、さもありなんという話は置いといて、明治通りと職安通りの交差点に大江戸線東新宿駅が開通、駅の真上に「徒歩0分」のマンションができたが、いまだに売れ残っているらしく、時々我が家にも電話がかかってくる。使えない大江戸線ができても陸の孤島に近いこの場所に、高層マンションを造る意味があるのだろうか? 歌舞伎町在勤者、つまりホストやイメクラ嬢やキャバクラ嬢やぼったくりバーの雇われ店長やゲーム賭博店の雇われ店長や、そしておっかないヤクザ屋さんであふれかえるのは目に見えている。
 六本木の防衛庁跡地は、周囲を少しも異化していないのに対し、この空き地こそ実にアーバン・サックス的だし、別の意味で「トマソン」的でもある。確かに、ホストやイメクラ嬢やキャバクラ嬢やヤクザだらけの高層マンションもすごそうだが、面白くはない。
 このアーバンな空き地をこのまま残して欲しいと、私は思うのだが。

 ちなみに、この空き地の広さは約1万坪(東京ドームや東京ディズニーランドよりは狭いが、サンリオピューロランドよりは広い)。日テレが買う前は前田邸という個人の邸宅だったそうで、そんな豪邸の所有者、前田さんって、いったいどんな人なのだろう?
 前田邸のことがわかったのは、早稲田の研究グループのホームページ「敷地研究」のおかげですが、前田氏については言及されていない。

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