ポイする惑星

 最後のゴミを撮影し損ねたにせよ、「ゴミの増殖」は一つの結末を見た。しかしそれが最終的な決着ではないと書いたのは、つい昨日のことだ。確かに新たなゴミの出現は予想されていたが、まさかこんなに早く・・・

2002年2月1日
 当局による撤去の翌日、早くも最初のゴミが捨てられた。路面の矢印の指し示す場所に、ヴィデオデッキがぽつねんと置かれている。前回は最初のゴミが現れるまでに一月弱かかっていたのに、予想外の早さである。
 思うにゴミを捨てた人は、この坂からゴミがきれいさっぱり消えているとは知らなかったのではないか。運んできたはいいが、それを置くべきゴミの山がない。しかしこのまま持って帰るのも馬鹿馬鹿しいからと、矢印に示されるまま、置いて帰ったのではなかろうか。
第1号のヴィデオデッキ

2002年2月4日
 ついに当局が宣戦布告。と同時に、「当局」が自らの正体を明らかにした。東京都第三建設事務所・新宿区清掃事務所・警察庁新宿警察署。その中心は東京都第三建設事務所であろう。同事務所は青島都政下、新宿西口地下道からホームレスの強制撤去を実行した強硬派である。区民からの苦情にうんざりした清掃事務所と組み、強権発動を念頭に警察署の協力を取りつけたのだろう。
 今はまだ平穏な坂道に、俄然きな臭い雰囲気が漂い始めた。

2002年2月7日
 当局の警告を無視し、もう3日後に目立つゴミが捨てられる。ものは衣類収納ケース。2つでワンセットで、白い方が外枠、ピンクが引き出しになっている。
2002年2月8日
 翌日、衣装ケースのピンクの方だけなくなっている。白い方は日光で飛んでしまい、見づらいが、向こうのマンション入り口に移動されている。これはこのマンションの住民に対する警告なのだろうか?
 一方左の壁際、自転車に紛れるように、ドンゴロス(ただし、麻ではなくナイロン製)が9つ捨てられる。中身はアスファルトの廃材。すぐ近くで道路工事をしているため、一時的に置いているだけかもしれないが、道路工事といえば、発注者は都か区ではないか。放置自転車を撤去しなかった当局のミスを突いているだけに、内部造反の可能性もある。
2002年2月8日
 坂の中ほどに、鉄製のボックスが捨てられる。スーパーカブのキャリアに取りつけるものだが、ホンダ純正品ではない。
 また、ドンゴロスのそばに金属片と伐られたばかりの木の枝が捨てられる。
 矢印の力が弱まっているのか、ゴミが捨てられる場所がこれまでと違う。矢印の先には、第1号のヴィデオデッキしかない。
2002年2月19日
 坂のゴミがすべてドンゴロス周辺に集められる。近所のお節介なおばさんの仕業だろうか? しかし画像を見てもらえばわかるとおり、ゴミは矢印と正反対の場所に集められている。これは矢印の地場を弱体化しようという当局の策略か、あるいは当局からの何らかのメッセージの可能性もある。

2002年2月28日
 最初はバイクが停めてあるものと思ったが、よく見ると後輪がない。前日までこのバイクは存在せず、駐輪中に後輪だけが盗まれたわけではない。当然、ナンバーも外されている。車種はKAWASAKI ZX-4
 過去最大の「ゴミ」だが、この分でいくと、自動車が不法投棄される日も遠くないかもしれない。
2002年3月2日
 バイクの前にテレビが捨てられる。また、第一号ゴミのヴィデオは破壊されている。壁際のスパーの袋の中身は、タイルが貼られたコンクリート片。風呂場かトイレを修理した産廃だろうか? 袋はクィーンズ・シェフとMARUSHOで、どちらも地元のスーパー。
 それから見づらいが、放置自転車には警告シールが貼られている。前回自転車を撤去しなかったことを、当局が敗因と認めたのだろうか?
2002年3月5日
 いくつかの段ボールに入ったゴミが捨てられる。また見づらいが、ヴィデオの上に針金のハンガーが大量。どちらも通常のゴミ回収で捨てられるものなのに、どうしてわざわざここに捨てる必要があるのか? やはり当局への示威行為なのだろう。
 そして、テレビが消えている。そういえばスーパーカブのボックスも消えていて、ここはここでリサイクルの場になってもいる。
2002年3月13日
 このところ捨てられるのは小さなゴミばかりで、変化に乏しかったが、久々に大物が捨てられる。黒い冷蔵庫。2ドアではいちばん小さい型だろうが、家電リサイクル法があるからには、これでも4,600円かかる。ちなみに不法投棄に対する罰則は、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金で、4,600円ケチるにしてはハイ・リスキー。
 当局への果敢な挑戦である。
2002年3月15日
 不思議なことに、乗り捨てられた自転車だけが撤去される。前回は自転車を残してゴミだけが撤去されたというのに。自転車を残したため、すぐにゴミが捨てられた不手際を反省したにしては、対応が遅すぎる。やはりお役所仕事ということだろうか? それともゴミと自転車では管轄が違うのだろうか?
 ちなみにそれら自転車が乗り捨てられていた、つまり駅前で盗まれていたものであれば、犯人は窃盗罪で10年以下の懲役に科せられるが、不法投棄とはみなされない。自転車泥棒は調書を取られて厳重注意、悪くて身元引受人を介して保釈になるのが普通で、自転車の持ち主から民事賠償を求められない限り、お金はかからない。
2002年3月20日
 冷蔵庫がなくなる。滞在期間、1週間。比較的早く引き取り手が見つかったようだ。
2002年3月22日
 黒い冷蔵庫に代わって、今度は黒いトランクが捨てられる。

2002年4月3日

 わかりづらいが、銀色の器具は業務用コーヒーメーカー。黒い大きなものはトランクに代わり、カラオケの機械とアンプ。スナックが廃業し、夜逃げのためにトランクを持っていった−−とは、あまりに出来過ぎた話ではあるが・・・
 これもわかりづらいが、壁にはオレンジの脚立が立てかけられている。

 実はこの翌日、筆者が引っ越したため、この場所を常時観察することができなくなってしまった。すでに1ヶ月以上経過し、果たしてゴミは増えているのか、当局はどのような手を打ってきたのか、一切が明らかではない。しかしこれをもってこの場所の定点観測を終了するのは忍びないので、機会があればこの場所を訪れ、変化の様を報告したいと考えている。

2002年7月8日
 久々に立ち寄ってみると、道がフェンスで囲われている! 路面の矢印が、何とも無意味に方向を指し示している。当局も大胆な手に出たものである。フェンス内は何かに使われている形跡もなく、意地としか思えない。 そしてフェンスの中にぽつんと置かれた、ほぼ1台分の自転車の部品。一見当局の圧勝とも思われる今回の急展開だが、この自転車が、新たな戦いの呼び水とならないとも限らない。当局は以前にもこのようなイージーミスを犯している。当局の勝利宣言は、時期尚早と言わざるを得ない。
2002年8月10日
 フェンスの中に乗用車2台とトラックが1台置かれ、「首都工業(株) 資材置場」という紙が貼られている。新宿2丁目にあるこの会社、公共工事に入札している土建屋である。この道は都道の側道なので、やはり都道なのだろうが、公道をフェンスで囲い、それを一業者に貸すというのは・・・当局から前衛守備を任されたということだろう。
 前回あった自転車の部品は、ちょうど張り紙の下辺りにまとめられている。そして更に、椅子が1つ捨てられており、背もたれの部分がぶっ飛んでいる。こなくそっ! と、フェンス越しに投げ込まれたのは明らかだ。
2002年10月29日
 約2ヶ月ぶりに訪れる。「首都工業」の張り紙もそのままあるが、ちゃんとした看板も取りつけられ、ライトバンが停められているほか、一部資材が整然と並べてある。フェンスの中にゴミはない。最早、資材置き場以外の何ものでもないと主張しているようだが、フェンスの脇に駐輪されたかのようなバイク。よく見るとナンバーが外されていて、不法投棄erの隙をうかがう視線が感じられる。ちなみに近くのごみ捨て場には、露出したブラウン管が2つ転がっていた。
2002年11月23日
 更に3週間後。若干資材が増えたようだが、フェンスの中に変化なし。ただしフェンスの脇に置かれたバイクの解体が始まる。座席シートは元々なかったが、後輪が外され、ヘッドライトが持ち去られている。
2003年4月24日
 前回の報告から5ヶ月後。フェンスの脇に置かれたバイクもなくなり、不法投棄も収まったかに見える。投棄が飛び火した近所のゴミ収集場所には、物々しい張り紙。日本語、韓国語、中国語で書かれているのが、いかにも新宿らしい。この張り紙のおかげか、通常のゴミ以外の物は見あたらない。

 この場所においては、明らかに収束に向かった不法投棄。プチ投棄は今後もあるかもしれないが、大きな変化は期待できそうにない。今回を持って、この場所の観測を終えたいと思う。
 投棄現場を資材置き場にしてしまうという新機軸が、当局に勝利をもたらした形だが、こうした荒手が使えない現場では、今も当局と不法投棄erの戦いが日夜繰り広げられているはずである。それはあなたのほんの近くかもしれない。

TOPhOS
TOP

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送