サリー

−−サリー、実はお別れを言いに来たんだ。もう、会わないようにしよう。
−−オ別レ？ドウシテオ別レヨ？
−−サリー、僕は病気かもしれない。
−−病気、カワイソ。ナンノ病気？
−−この骨が痛いんだ。
−−骨、折レタ？
−−いや、ぶつけたんじゃない。この骨の下には、肝臓がある。肝臓、レバー。レバーでわかるかな？
−−オ腹？
−−まあ、そうだ。
−−どくたー、なんって言ってる？
−−まだドクターには診せていない。
−−ナンデ診セナイ？
−−まだ診せられないんだ。
−−診セナイヨクナイ。病院恐カッタラ、ワタシ、一緒ニ行クヨ。
−−サリー、病気の原因は僕らのことなんだよ。僕は奥さんを裏切ったから、病気になったんだ。
−−奥サン、バレタカ？奥サン、毒飲マセタカ？
−−いや、ばれてない。毒も飲ませていない。奥さんには、不思議な力があるんだ。
−−不思議ナ力？
−−そう。超能力といってもいい。
−−ソレ、ナニ？
−−サイキック・パワー。わかる？
−−わからない。
−−サイコ、サイコロジー、知らない？じゃあ、えーと、サイコキネシス、テレポテーション、わからない？
−−のー。
−−じゃあ、テレパシーは？
−−てれぱしー、いえす。知ッテル。
−−彼女にはわかるんだ、僕のしていることが。はっきりとじゃなく、ぼんやりとだけど。
−−ヤッパ、バレタンジャナイ。
−−いや、そうじゃなくて、彼女が知らなくても、彼女になにかすると、悪いことが起きるんだ。
−−例エバ？
−−彼女と喧嘩すると、頭が痛くなったり、お腹が痛くなったり。彼女の悪口を言うと、煙草が爆発したり。
−−爆発、ウソヨ。
−−ホントだよ。それから、彼女がなにか欲しいと思うと、必ず手に入る。なにかで当たったり、たまたま僕が買ってきたり。
−−奥サン、欲張リヨ。欲シクナイモノナイカラ、ナンデモ欲シカッタッテ言ウ。
−−そうじゃないよ。実際に体験してみないとわからないかも知れないけど、確かにそうなんだ。超能力じゃなければ、守護霊だ。
−−ナニ、ソレ？
−−幽霊、ゴースト。だけど、悪いゴーストじゃない。
−−イイごーすと？
−−そう、彼女のおじいさんか、そのおじいさんか、誰か知らないけど、彼女を守っているのかもしれない。
−−奥サン、悪魔ジャナイノ？
−−え？
−−アナタ病気ニシタナラ、奥サン、悪魔ヨ。ワタシ、好ナ人ガ浮気シテモ、ソノ人病気ニシナイ。浮気、悲シイ。病気モ悲シイ。
−−そりゃそうさ。奥さんだって、同じさ。
−−アナタ、オカシイヨ。病気、奥サンノセイ言ッテ、奥サン、優シイ言ウ。ワタシ、悲シイ。ワタシ、嫌ワレタデショ？
−−いや、嫌いになんかなっていないよ。ただ、いつまでもこのままじゃいけないし、いつかはこうなるんだ。きっと神様が、僕にサインを送っているんだ。
−−アー、今度ハ神様。アナタ、神様信ジテルノ？
−−キリストは信じちゃいないが・・・
−−モウ、イイ。嫌イナラ嫌イト言ッテヨ！
−−嫌いじゃないよ。
−−ジャア、奥サント別レテヨ。
−−ごめん。別れられない。
−−日本ノ男、ミンナソウネ。愛シテル、デモ結婚デキナイ。
−−だからもう別れようって言ってるんじゃないか。僕はもう、これ以上奥さんを裏切ることは出来ない。
−−奥サン、愛シテルネ。浮気スルト、心、痛イ痛イネ。
−−違う。痛いのは肋骨だよ。

おわり